決済手段が多様化した現在でも、小切手は商取引などで使われています。小切手の基礎知識と、小切手の現金化の方法について紹介します。
小切手とは?
小切手とは、指定した金額の支払いを約束する有価証券です。
IT技術が発達した現在、クレジットカード払いや電子決済払いなど現金を使わずに支払いができる決済方法は数多く生まれています。
しかし昔は、現金払いが主流で高額の決済を予定していたら多額の現金を持ち運ぶ必要があったため、常に盗難などの危機と隣り合わせでした。
そこで生まれたのが小切手による決済方法で、現金の代わりに商取引の場などで使われてきました。
小切手は小さな紙一枚で持ち運びがしやすく、また盗難などに遭遇する危険を回避するための仕組みが作られています。
決済で小切手を受け取った人は、金額や振出日など小切手に記載されている内容を確認して金融機関に持ち込みます。
金融機関でも記載内容を確認し問題がなければ、小切手を発行した人の当座預金口座から小切手に記載されている金額を持参した人に支払います。
決済手段が多様化した現在、小切手の流通は以前より減ってきているとはいえ、商取引の場などでは今でも利用されています。
知っておきたい小切手の用語
小切手の取引では、一般の方にはなじみのない用語が使われていますので紹介します。
小切手帳(統一小切手用紙) | 小切手を振り出すときに使う小切手用紙を綴ったもの |
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振り出し | 小切手を発行すること |
振出人 | 取引で支払いのために小切手を発行する人 |
振出日 | 小切手を振り出した日付 |
受取人 | 小切手を受け取る人 |
持参人 | 小切手を受け取りに金融機関に持って来た人 |
支払人 | 持参人または指定の金融機関に対して支払いを行う金融機関 |
手形交換所 | 一定の地域内にある銀行・信金などの金融機関が、取引先から受けた他行払いの小切手や手形などを持ち寄って相互交換して集中決済を行う場所で、平成29年1月1日現在、国内に184カ所ある |
知っておきたい小切手のルール
当座預金の開設
小切手を振り出す場合は、金融機関に当座預金口座を開設しておく必要があります。
小切手帳(統一小切手用紙)の使用
小切手による取引には、小切手法という法律があります。
小切手法では、必要な記載事項がすべて記載されていれば、どのような紙に書かれていても小切手として法的に有効としています。
しかし、受け取る側にとっては、それが本当に有効な小切手なのか判断がつかず、不安を抱くことになります。
このため、日本の金融機関では様式を統一した小切手帳(統一小切手用紙)を交付しており、それが広く使われています。
金額の訂正は無効
金額を間違えた場合、二重線、訂正印などで訂正して書き直してしまうとその小切手は無効となるので、新しい小切手用紙に正しい金額を記載し、新たに振り出す必要があります。
不渡りの種類とペナルティ
不渡りは、金融機関に持ち込まれた小切手が現金化できない状態のことをいいます。
不渡りはその原因により3つに分けられています。
0号不渡り | 振出人の署名や押印がない、呈示期間(支払い期間)が過ぎている、 支払い期日がまだ来ていないなど記載不備が理由による不渡りです。 |
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第1号不渡り | 当座預金の残高不足や、振出人がその金融機関に当座預金を開設していないなど、 資金不足が理由による不渡りです。 |
第2号不渡り | 0号と第1号不渡りに該当しないすべての不渡りが第2号不渡りとなります。 例をあげると、受取人の契約不履行や、 偽造、詐欺、盗難、紛失など犯罪被害のよる不渡りがあります。 |
不渡りを出すと、1号と2号の不渡りの場合は金融機関が「不渡届」を作成して手形交換所に提出し、「不渡報告」として加盟金融機関に通知します。
不渡りを1回出すと、「不渡報告」ですべての金融機関が知るところとなり、振出人の信用は失墜して追加の借り入れが難しくなります。
また、1回目の不渡りから6カ月以内に2回目の不渡りを出すと、振出人は銀行取引停止処分となり、以後2年間、当座勘定取引や貸出取引ができなくなります。
事業を行う上で必要な金融機関との取引ができなくなりますので、事実上の倒産ということになります。
2号の場合は、「不渡届」は作成されますが、資金不足が招いた不渡りではないため、振出人が「異議申し立て」を行うことで「不渡届」の提出、「不渡報告」の通知を止めることができます。
0号については「不渡届」の作成は行われず、金融機関との取引の停止処分はありません。
しかし、取引先との信頼関係を損なうものですので、小切手は慎重に記載して振り出すよう注意が必要です。
小切手の種類
小切手にはいろいろな種類があり、種類によって特徴や制約される内容が違います。
持参人払小切手
小切手帳には、「上記の金額をこの小切手と引き換えに持参人へお支払いください」とあらかじめ印刷されており、そのまま使うと持参人払小切手となります。
持参人払小切手を持ち込まれた金融機関では、持参した人にその場で現金による支払いを行います。
もし、この小切手を拾った人や盗んだ人が持参しても、現金は支払われてしまいます。
最も流通しているのがこの持参人払小切手ですが、勝手に現金化されてしまう危険を伴っていますから慎重に取り扱う必要があります。
記名式小切手
持参人払小切手に記載された「上記の金額をこの小切手と引き換えに持参人へお支払いください」の文言の、「持参人」の部分を二重線で消して届出印で訂正印を押し、特定の会社や人の名前を記載した小切手です。
指定された会社や人以外の使用を防ぐことができます。
線引小切手
小切手に2本の平行線を引いた小切手が線引小切手です。線引小切手には、一般線引小切手と特定線引小切手があります。
一般線引小切手
2本の平行線の間には何も書かれていないか、「銀行」「Bank」などと書かれているだけのものです。
この一般線引小切手は、金融機関に持ち込んでもその場で現金で支払いを受けることはできず、口座へ入金されます。
取引履歴が残るため、盗難や詐欺など不正に取得した者による現金化を防止することができます。
特定線引小切手
2本の平行線の間に特定の金融機関名が書かれた小切手です。
この特定線引小切手は、記載された金融機関の口座にしか入金できず、一般線引小切手の安全性をさらに強化したものとなります。
先日付小切手
振出人の「即日換金は待ってほしい。○日までに当座預金に預金を用意するので、そのあとで換金してもらいたい」という要望に従って、小切手の振出日を先の日付にした小切手です。
通常小切手は、振出人の当座預金にある残高が原資となって支払われますが、振出人の事情で当座預金の残高が小切手に記載されている金額に満たない場合に振り出されます。
約束手形に似ていますが、先日付小切手の日付には法的根拠がありません。
この先日付小切手を受け取ったあと、すぐに金融機関に持参することは可能で、金融機関は支払いを拒否できません。当座預金に残高があれば、即日現金化が可能です。
しかし、もし残高不足になっていると「不渡り」になります。
不渡りを半年間に2回出してしまうと振出人は銀行取引停止となり、事業継続が難しくなり事実上倒産してしまいます。
資金繰りが難しいから先日付小切手を出している場合があることを考えると、即日金融機関に持ち込み現金化して資金を回収しておきたいところ。
ですが、持ち込んだことで取引先が不渡りを出してしまい事業継続が難しい状況になれば、小切手を現金化するのが難しくなります。
したがって、金融機関に持ち込むタイミングを決めるのが、難しくなるケースが考えられます。
小切手の種類 | 特徴 | |
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持参人払小切手 | ・持参人を指定しておらず誰でも現金化が可能 ・どこの金融機関でも現金化が可能 ・窓口で即日現金化が可能 ・盗難や紛失による不正換金を防止できない |
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記名式小切手 | ・持参人を指定しており、それ以外の人は現金化できない ・どこの金融機関でも現金化が可能 ・窓口で即日現金化が可能 ・盗難や紛失による不正換金を防止できる |
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線引小切手 | 一般線引小切手 | ・現金化の方法は金融機関の口座振込のみ ・窓口で即日現金化はできない ・盗難や紛失による不正換金を防止できる |
特定線引小切手 | ・現金化の方法は指定された金融機関の口座振込のみ ・窓口で即日現金化はできない ・盗難や紛失による不正換金を防止できる |
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先日付小切手 | ・先(将来)の日付を振出日として記載されている ・振出日より前でも振出人の当座預金に残高があれば現金化することは可能だが、残高がなければ不渡りとなる |
知っておきたい小切手Q&A
小切手現金化の換金期限は?
小切手は、金融機関に呈示する期間が定められています。
呈示期間は小切手の振出日翌日から10日以内(振出日を含め11日間)となっており、呈示期間の最終日が金融機関の休業日であった場合は翌営業日まで延長されます。
もし、小切手の振出日の翌日から10日目までの間に連休などが入った場合、その日数分期間が延長されるわけではありません。
呈示期間内に連休や金融機関の休業日が入っても、10日目が営業日であれば呈示期間はその日までとなりますのでご注意ください。
10万円以上の小切手を現金化する場合に注意することは?
金融機関の窓口にて額面10万円以上の小切手を即日現金払いで受け取る場合は、持参人の本人確認書類を提示する必要があります。
本人確認書類として認められるものは運転免許証、旅券(パスポート)、住民基本台帳(写真付)、各種健康保険証、外国人登録証明書などです。くわしくは取引先の金融機関で確認してください。
小切手と手形の違いは?
小切手と同じく現金化できる有価証券に手形があります。小切手と手形を混同する方が多いので、簡単にその違いを紹介しましょう。
手形は、期日と場所(金融機関)を指定して記載された額面の支払いを約束する有価証券です。企業間で商品の代金や掛代金の決済方法としてよく使われています。
手形には約束手形と為替手形の2つの種類があります。約束手形は振出人が約束手形の受取人に対して、特定の期日に現金を支払うことを約束するものです。
為替手形は手形の受取人にお金を支払うのは振出人ではなく、第三者の支払人です。振出人が支払人に支払いを依頼する形になり、三者間取引で用いられる決済方法です。
小切手と手形の大きな違いは現金化までのスピードです。手形は金額以外に日付や場所を記載しているため、指定した日にならないと現金化(口座入金含む)できません。
手形は小切手とは違い、支払期日をかなり先の日付にできるため、資金繰りができず今現在十分な資金がないというときに適した決済方法です。
小切手は受け取ってすぐに金融機関に持参すれば、即日で現金化(口座入金含む)することが可能です。
先日付小切手は将来の日付で振出日を設定してありますが、これには法的な効力がないため場合によっては即日現金化することも可能です。
まとめ
小切手の現金化について紹介しました。
小切手は、金融機関の窓口に行けば現金で受け取れるもの、口座入金しかできないものなど種類によって現金化の条件が異なります。
小切手は現金化の期限が定められており、振出日の翌日から10日以内となっています。また額面10万円以上の小切手は、持参人の本人確認書類の提示が必要です。
小切手の現金化をする際は、今回紹介した内容を確認し、間違いのないように準備してから金融機関へ行くようにしてください。