「債務整理を行うと、配偶者(夫または妻)の信用情報も悪化してしまうのではないか」と、心配になるのではないでしょうか?
「自分だけでなく配偶者も借金の責任を追及されて、離婚問題に発展したらどうしよう」と、深刻にとらえてしまう人もいるかもしれません。
債務整理を行ったことで、夫婦のいずれも借入れができなくなってしまうと、住宅費や教育費を賄うのにも困ってしまうでしょう。
ここでは、自分の債務整理が配偶者の信用情報に悪影響を及ぼすことはないのか、結婚生活にどのような影響があるのか、といった疑問に答えていきます。
債務整理を行うと配偶者にデメリットはある?
債務整理を行うと、債務者本人はブラック状態(金融事故によって信用情報が悪化している状態)となり、その後5年~10年間はクレジットカードやローンの申込みができなくなります。
ですが、債務者の配偶者の信用情報まで悪化してしまうことは、基本的にありません。
夫婦が別々の名義で借入れしているなら、各々の信用情報も独立したものとなり、互いに影響されることがないからです。
例えば、夫が債務整理を行ったことでブラック状態になったとしても、妻の信用情報が悪化することはないので、クレジットカードやローンの審査に悪影響が及ぶことはありません。
妻自身の名義で契約しているクレジットカードも、今まで通り使うことができます。
配偶者が代わりに返済する義務はある?
法律上、借金の返済や財産の処分については、「夫婦別産制(夫婦が各々の財産を独立して管理・所有する制度)」により、夫婦別々の責任として扱われます。
つまり、債務整理の効果は債務者自身にしか及ばないので、その配偶者に返済が請求されることはありません。
また、債務者が自己破産を行って財産を処分しなければならない場合、その配偶者名義の財産は処分の対象になりません。
債務整理を行うと噂になる恐れはある?
「債務整理をすると近所の噂になって、配偶者に嫌な思いをさせるのではないか」と心配する人もいると思いますが、そのようなことはまずありません。
債務整理を扱う弁護士・司法書士は秘密厳守を徹底しており、依頼者の要望に応じて家族や勤務先にもバレないように手続きを進めてくれるからです。
個人再生と自己破産に関しては、政府が発行する「官報」という機関紙に債務者の名前が掲載されますが、それが一般の目に触れる機会はほぼありません。
信用情報機関が管理する金融事故情報(借金延滞や債務整理の履歴)に関しても、一般の人に公開されることはないので安心してください。
※債務者本人またはその代理人に限り、「信用情報開示請求」という手続きによって信用情報を照会することができます。
債務整理で配偶者にデメリットが生じるケースもある
先述したように、基本的には夫婦それぞれの信用情報が互いに影響しあうことはありません。
しかし、以下に述べるケースは例外として、債務整理を行うと配偶者にもデメリットが生じる可能性があります。
配偶者が専業主婦(無職)または低収入の場合
専業主婦(無職)または低収入の人が借入れを申込む際は、家計支持者(家計を主に支えている人)が審査の対象となります。
債務整理などが原因で家計支持者の信用情報が悪化していると、収入を家計支持者に頼っている配偶者もクレジットカードの審査に通らなくなってしまいます。
家計支持者が著しい返済遅延や多重債務(複数の借入れを行って返済が困難な状況)を抱えている場合も、配偶者に影響が及んでしまうので注意しましょう。
例えば、専業主婦がクレジットカードを申込む時は、家計を支えている夫またはそれ以外の家族に対して審査が行われます。
夫が債務整理を行うと、金融事故情報が削除されるまでの5年~10年間、妻はクレジットカードやローンの申込みができなくなってしまいます。
ですが、妻が働いて定期収入を得ることができる状態であれば、妻自身の名義でクレジットカードやローンの申込みはできます。
夫が債務整理を行っていたとしても、妻に定期収入があって信用情報がクリーンな状態なら、クレジットカードの審査に悪影響を及ぼすことはありません。
収入の少ないアルバイトやパートをしている人でも、定期的な収入があれば審査のやさしい流通系クレジットカードなら簡単に作ることができます。
配偶者が債務者名義の家族カードを持っている場合
家族カードとは、クレジットカードを契約している本会員の家族(配偶者や子供、両親など)に対して、追加で発行できるカードのことです。
家族カードはあくまで本会員の名義で契約するので、本会員の信用情報を元に審査が行われます。
よって、学生や専業主婦といった無収入の人でも、本会員の家族会員になることで、簡単にクレジットカードを持つことができます。
ただし、本会員になっている家族が債務整理を行いブラック状態になると、本会員のクレジットカードと一緒に家族カードも使えなくなってしまいます。
例えば、妻(家族会員)が夫(本会員)の名義で家族カードを発行した場合、夫が債務整理を行うと、夫も妻もクレジットカードが使えなくなります。
なお、家族カードの使いすぎで返済不能になってしまったら、家族会員の代わりに本会員が債務整理を行う必要があります。
なぜなら家族カードで作った借金は、本会員が返済の責任を負わなければならないからです。
あなたがクレジットカードの本会員であれば、家族会員がカードを使いすぎたことによっても、自分の信用情報を傷つけるリスクがあります。
家族カードを発行したら、「家族の借金も自分の借金」だと思って、家族カードの利用明細にも注意を払っておきましょう。
自己破産を行った場合
自己破産を行うと、借金を全額免除できますが、一方で債権者は丸損になってしまいます。
そこで、債務者は処分できる財産があれば処分し、債権者に配分しなければなりません。
原則として家族名義の財産は処分されませんが、「実質的に債務者の所有物でもある」とみなされる財産については、処分対象になる恐れがあります。
例えば、債務者の配偶者名義で購入した家であっても、夫婦で住んでいる家なら二人の共有財産とみなされ、処分されてしまう可能性が高いです。
自宅が失われると、配偶者や子供にも多大な迷惑をかけてしまうので、自己破産は本当に最後の手段にするべきでしょう。
大切な財産を残して債務整理を行う方法として、「任意整理」または「個人再生」という選択肢があります。
任意整理なら整理する借金を自分で選ぶことができるので、家や車などのローンを残すなど、生活への影響を最小限に抑えられます。
個人再生では原則として全ての債務を整理しなければなりませんが、特例により住宅ローンは残せるので、自宅を手放すことへの不安はなくなります。
車の場合はローンを完済していれば手元に残せますが、ローンが残っている車は基本的に処分対象になります。
多くのカーローンでは、返済中の車の所有権はローン会社にあり、契約者はローンを完済するまで車を借りているという扱いになります。
よって、契約者はローンの返済ができなくなってしまったら、ローン会社に車を返さなければなりません。
ですが、一部の銀行や信用金庫が提供するカーローンには、車の所有権をはじめから契約者にできるのもあるので、こうしたローンを契約していれば返済ができなくなっても車を返す必要はありません。
配偶者が借金の連帯保証人になっている場合
債務者の配偶者が借金の連帯保証人になっている場合、債務者が個人再生や自己破産を行うと、代わりに配偶者が返済の責任を負わなければなりません。
例えば、夫が契約している1,000万円の住宅ローンの連帯保証人が妻になっている場合は、夫が自己破産を行ったら、代わりに妻が1,000万円を返済する必要があります。
妻が代わりに返済できなければ、夫と共同で債務整理を行わなければなりません。
連帯保証人に負担がかかるのを避けるには、「任意整理」という手続きを行うのがおすすめです。
任意整理では、連帯保証人を設定している借金を整理対象から外し、今まで通り返済を続けていくことができます。
連帯保証人を設定しているのが住宅ローンの場合は、「個人再生」という手続きの「住宅資金特別条項」を利用すると、住宅ローンだけを残して債務整理が行えます。
債務整理後も家族カードは作れる?
債務整理を行った人は自身の名義でクレジットカードを作れなくなってしまいますが、家族カードは作ることができるのかどうか気になりますよね。
家族カードの審査はクレジットカードの本会員を対象に行われるので、家族の信用情報までは厳しくチェックされません。
よって、債務整理を行った人でも家族カードを発行できる可能性はあります。
また、本会員の家族が債務整理を行ったとしても、本会員のクレジットカードが強制解約されてしまうという心配はありません。
債務整理後に家族カードを申込む際は、以下の点に注意してください。
家族カードの利用は家族への配慮も必要
クレジットカードの使いすぎが原因で債務整理を行った人は、債務整理後も家族カードの使いすぎに注意しましょう。
家族カードで作った借金は本会員が返済しなければならないので、借金癖を直さなければ家族にも迷惑をかけてしまいます。
また、カードの利用枠は本会員と家族会員で共有になっているので、家族の誰かがカードを使いすぎると、ほかの家族の利用枠が少なくなってしまいます。
そのため、今まで通りカードを自由に使えるというわけにはいかなくなりますので、家族への配慮も必要になるでしょう。
債務整理を行ったカード会社では家族カードを作れない可能性がある
過去にクレジットカードの債務整理を行ったことがある人は、カード会社が独自で管理するブラックリストに登録され、いわゆる「社内ブラック」と呼ばれる状態になってしまいます。
あるカード会社で社内ブラックになると、その会社では半永久的にクレジットカードが作れなくなる恐れがあります。
本会員の信用情報に問題がないとしても、その家族であるあなたが社内ブラックになっていると、家族カードを発行してもらえない可能性は高くなります。
家族カードの審査に落ちてしまったら、過去に債務整理を行った会社とは違う会社で申込みましょう。
途上与信によって家族カードの利用を制限されることがある
カード会社では、クレジットカードを発行した後も定期的に「途上与信(会員の信用情報の変化をチェックすること)」を行っています。
途上与信によって、本会員の家族が債務整理を行ったことが判明すると、家族カードの利用を制限されることがあります。
また、本会員が債務整理などの金融事故を起こした場合も、家族カードが使えなくなってしまうので注意しましょう。
債務整理後に結婚したらクレジットカードは作れる?
旧姓で登録された金融事故情報は、結婚後の名字でも照会されてしまうのかどうか、気になるところだと思います。
「債務整理後に結婚して名字が変わると、債務整理を行った事実が消えるのではないか」と考える人もいるでしょう。
実際のところ、クレジットカードやローンの申込み時には旧姓の記入が必要なことが多く、旧姓で信用情報が照会されれば、債務整理を行った事実は簡単にバレてしまいます。
結婚前に作った借金を完済し、金融事故情報が削除されるまでの間は、原則として結婚後もクレジットカードを作ることはできません。
「申込み時に旧姓を隠しておけば、過去の金融事故情報はバレないのでは?」と思っていられる方もいるかもしれませんが、そんなに都合よくはいきません。
カード会社は申込み者の信用情報を過去に至るまで徹底的に調査するので、旧姓を隠しても意味がありません。
むしろ旧姓は正直に申告した方が、カード会社からの信用を得られて審査に通りやすくなるでしょう。
まとめ
債務整理によって、配偶者の信用情報や結婚生活にどのような影響があるかをまとめます。
- 債務整理を行っても、原則として配偶者の信用情報が悪化することはない
- 専業主婦が借入れをする場合、配偶者の信用情報が審査に大きく影響する
- 自己破産を行うと、家族で共有している財産(自宅や車など)が処分される恐れがある
- 配偶者が連帯保証人になっている場合、債務整理を行うと配偶者にも返済の負担がかかる
- 債務整理後でも配偶者の名義で家族カードを作ることは可能
- 結婚前に債務整理を行った事実は、名字が変わっても結婚後も消えることはない
夫と妻のどちらかが債務整理を行っても、基本的にはお互いの信用情報や固有財産に悪影響を及ぼすことはありません。
債務整理を行った人でも、代わりに配偶者がクレジットカードやローンを申込めば、お金がない生活をしのぐことができます。
ただし、家計を主に支えていた人が破産してしまったり、夫婦間で連帯保証人になっていたりする場合は、債務整理によって生活が行き詰まってしまう恐れがあります。
夫婦そろって借金の返済に悩んでいるなら、家族の財産を守って生活を安定させるためにも、早めに弁護士に相談しましょう。