クレジットカードがあれば、水道代・電気代・ガス代といった公共料金も手軽に支払えるので重宝しますよね。
公共料金をカード払いにすると、支払いの管理がしやすいことに加え、ポイントがつくというメリットもあります。
さらに、家計が苦しいときでもクレジットカードで公共料金の立て替え払いができるので、電気や水道が止まる心配をすることもありません。
しかし、債務整理を行った後もクレジットカードは使えるのか、公共料金のカード払いは続けられるのかと、不安になるのではないでしょうか?
クレジットカードが使えなくなると、お金に困ったときに立て替え払いができず、公共料金を滞納してライフラインを止められてしまう恐れが出てきます。
ここでは、債務整理後の公共料金の支払い方法に関する疑問点や、公共料金を滞納して困ったときの対処法についてお答えします。
債務整理後も公共料金のクレジットカード払いはできる?
債務整理を行うと、整理対象にしたクレジットカードはすぐに使えなくなり、公共料金のカード払いもできなくなってしまいます。
公共料金に限らず、携帯電話料金やプロバイダ料金、保険料といったあらゆる支払いでクレジットカードが使えなくなるので要注意です。
カード払いのみ対応しているサービス(ネット通販や一部のインターネットプロバイダなど)は支払いの手段がなくなるので、サービスの利用を中止せざるを得ません。
債務整理を開始すると、整理対象のクレジットカードをカード会社に返却することになりますので、二度と支払いに使えなくなります。
公共料金の支払いに使っていたクレジットカードを返却したら、すぐに支払い方法の変更手続きを行いましょう。
債務整理でクレジットカードを残す方法はある?
クレジットカードを残せるかどうかは、債務整理の手続きの種類によって異なります。
債務整理の手続きの種類には、「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つがあります。
個人再生と自己破産については、クレジットカードを含めすべての債務を整理対象にしなければなりません。
その代わり、個人再生では借金の大幅減額が、自己破産では借金の免除が可能になります。
任意整理の場合は、整理対象にする債務を自分で選択できるので、手元にクレジットカードを残すことができます。
元々持っていたクレジットカードを整理対象から外せば、債務整理後も当面は公共料金の支払いにカードが使えます。
しかし、任意整理も個人再生・自己破産と同様に金融事故扱いとなるので、信用情報の悪化によりクレジットカードの新規発行はできなくなってしまいます。
さらに、カード会社では定期的に会員の信用情報をチェックしているので、整理対象から外したクレジットカードもいずれは利用停止になる可能性が高いです。
カード払いを再開できるのはいつから?
債務整理から5年~10年経過すると、信用情報機関が金融事故情報を削除するので、再びクレジットカードを使えるようになります。
しかし、債務整理前に持っていたクレジットカードはすべて解約されてしまっているので、カード払いを再開するには新しいクレジットカードを作る必要があります。
ただし、債務整理を行ったことがあるカード会社では、5年~10年以上経過したにも関わらず審査に落ちてしまうことがよくあります。
原因は、カード会社で債務整理を行うと会社独自のブラックリストに登録されてしまい、そのリストが半永久的に残ってしまうからです。
また、信用情報機関の金融事故情報が削除されてから間もないうちは、債務整理を行っていないカード会社でもなかなか審査に通らない場合があります。
債務整理を行ってから5年~10年間は借入れが一切利用できず、その空白期間中は信用情報が全く記録されないので、カード会社は「過去に債務整理を行ったのではないか」と疑うからです。
このような状態を、信用情報が真っ白になっていることから「スーパーホワイト」と呼びます。
スーパーホワイトであっても、「高収入・勤続年数が長い・持ち家あり」といった好条件が揃っていれば、審査に通る可能性は高くなります。
そうでない場合は、クレジットカードを作る前に少しずつ「クレジットヒストリー(借入れの返済実績)」を作り、信用力を高めていきましょう。
クレジットカードが使えなくても、スマホの割賦払いやショッピングの分割払いを利用すると、クレジットヒストリーは簡単に作ることができます。
債務整理後に支払い方法を変更するには?
公共料金などの固定費用をカード払いに設定しているなら、債務整理後は忘れずに支払い方法を変更しましょう。
特に、公共料金は支払いが止まると電気・水道・ガスが使えなくなってしまうので、早めの手続きが重要です。
公共料金の支払いは、カード払い以外にも以下の方法に対応しています。
銀行口座振替 | 自動引き落とし |
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納付書払い | 金融機関の窓口やコンビニで納付書を使って支払う |
おすすめの支払い方法は、窓口に行かなくても毎月自動で支払いが完了し、払い忘れの心配がない銀行口座振替です。
銀行口座振替にすると、「口座振替割引」が適用され公共料金がお得になるというメリットもあります。
例えば、全国トップの電力販売量を誇る「東京電力」では、ひと月あたり54円の口座振替割引が受けられます。
ただし、電力自由化の流れで登場した「新電力事業者(大手電力会社以外の新しい電気事業者)」では銀行口座振替に対応しておらず、カード払いしか利用できないことがあるので注意しましょう。
支払い方法の変更はいつ行う?
支払い方法の変更は、債務整理を開始してから3ヶ月以内には済ませておきましょう。
債務整理を開始すると、整理対象から外したクレジットカードも2~3ヶ月経てば使えなくなる可能性が高いからです。
クレジットカードが利用停止になっているのに、カード会社に公共料金の請求があると、決済エラーとなって滞納扱いになる恐れがあります。
公共料金の支払い方法が切り替わるまで1ヶ月以上要する場合があるので、できるだけ早く変更手続きを開始しましょう。
銀行口座の凍結に注意
銀行系のクレジットカードやローンを債務整理の対象にすると、その銀行で利用している口座が凍結され、銀行口座振替ができなくなってしまうので注意してください。
口座凍結の期間は銀行によってまちまちですが、大体1~2ヶ月間くらいが目安です。
凍結期間中は、公共料金等の支払いをコンビニ払いや他行の口座振替に変更しましょう。
また、凍結された口座では出金もできなくなるので、債務整理を開始する前に預貯金を引き出し、安全な口座に移しておきましょう。
その際、同じ銀行の別支店の口座もすべて凍結されてしまうので、借入れをしていない他行の口座に移す必要があります。
凍結される恐れがある銀行口座を給与振込み口座に指定している場合は、忘れずに振込み先の変更手続きを行わなければなりません
給与以外にも入金の予定があれば、併せて振込み先変更の連絡をする必要があります。
口座が凍結されるタイミングは、銀行が弁護士からの受任通知(債務整理を開始したことを伝える書面)を受領してから数日以内です。
それまでに、預貯金の引き出しや振込先変更の手続きはすべて済ませておきましょう。
銀行口座の凍結は回避できる?
任意整理を行う場合は、銀行を債務整理の対象から外すと口座凍結を免れることができます。
その代わり、銀行からの借金はすべて返済しなければならないので、多額の借金を抱えている場合は個人再生または自己破産をおすすめします。
個人再生と自己破産はすべての債務の負担を軽減できる代わりに、借入れをした銀行の口座は凍結を回避できません。
借入れをしていない銀行の口座は凍結を免れますが、クレジットカードの引き落とし口座に設定している場合は注意が必要です。
債務整理の開始後、クレジットカードの解約手続きが完了する前に口座引き落としが続いてしまうと、「一部のカード会社を優遇して返済した」とみなされて問題になる可能性があるからです。
個人再生と自己破産では「債権者平等の原則」により、すべての債権者に対して平等に返済しなければなりません。
手違いによる偏頗弁済を防ぐには、債務整理を開始する前に、クレジットカードの引き落とし先口座の残高を空にしておきましょう。
公共料金が払えなくなったときはどうする?
債務整理を行うと、クレジットカード以外の借入れも利用できなくなるので、公共料金が払えなくなったときにその場をしのぐことができません。
ですが、公共料金の支払いが少し遅れるだけなら、すぐに電気や水道が止まるわけではないので安心してください。
公共料金の支払いを猶予してもらえる期間は、ライフラインの種類によって違い以下のようになっています。
電気 | 検針日の翌日から50日間 |
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水道 | 水道料金の納入期日から2ヶ月間 |
ガス | 検針日の翌日から50日間 |
上記の期間を過ぎても公共料金の支払いができなければ、電気・水道・ガスは強制的に止められてしまいます。
最低限の生活レベルを維持するには、電気代→水道代→ガス代の順番に優先順位が高いものから払える分だけ払っておきましょう。
電気代だけでも払っておけば、ガスが使えなくても炊飯器や電子レンジである程度の調理はできますし、照明や冷暖房など生活に欠かせない家電も使えるからです。
水については近所の公園や市販の水で必要最低限の量を調達できますが、お風呂やトイレが使えない日が続くと困るので、電気代の次に支払いを優先しましょう。
延滞利息の発生と強制解約に注意
電気代とガス代に関しては、支払いを滞納すると「延滞利息」が発生します。
(水道代の場合、自治体によって措置が異なりますが、ほとんどの場合延滞利息は発生しません。)
延滞利息の平均年利はおよそ10%で、延滞日数に応じて1日あたり約0.03%ずつ加算されます。
滞納日数が増えるほど延滞利息の負担が大きくなるので、支払いができなくなったときは電力会社・ガス会社に連絡して、支払い期日を延長してもらえないか相談しましょう。
また、新電力会社とガス会社の場合、滞納が長期化すると電気・ガスが止まるだけでなく、契約を強制解約されてしまうことがあります。
クレジットカード等の債務整理を行って信用情報が悪化した際も、強制解約される可能性が高いので注意しましょう。
大手電力会社に関しては、「最終供給義務(新電力会社を利用できない人に対し、電気の供給を保障する義務)」というセーフティネットがあるので、強制解約までされる心配はありません。
民間事業者では再契約を断られる可能性も
支払い滞納により強制解約となった新電力会社・ガス会社では、再契約を申込んでも断られる可能性が高いです。
電気・ガスの自由化によって登場した新しい民間事業者は、各会社の裁量で契約を強制解除できる他、申込みを自由に断る権利を持っています。
小規模で薄利多売の民間事業者にとっては、料金の滞納者が増えると経営に少なくない悪影響が及んでしまうからです。
新しい会社に乗り換えようとしても、元の会社の料金未払いが残っていると、契約を断られることがあるので注意してください。
その場合、早急に滞納分を支払ってから申込むか、多少割高でも大手の電気・ガス会社に変更するしかありません。
公共料金の滞納も債務整理で解決できる?
債務整理を行った後しばらくは借入れで当座をしのげなくなるので、公共料金の支払いを滞納してしまう恐れがあります。
公共料金を滞納してしまった場合も、債務整理を行って支払いを減額・免除してもらうことはできるのかどうか気になりますよね。
滞納した公共料金を払いきれなくなったら、自己破産を行って支払いを免除することは可能です。
ただし、免除されるのは電気代とガス代のみであり、水道代に関しては税金と同様に必ず支払わなければなりません。
また、免除されるのは滞納した分の公共料金だけなので、自己破産後に発生する公共料金は支払いを続ける必要があります。
債務整理中の公共料金の支払いには注意が必要
電気やガスが止まるのを防ぐため、債務整理中に滞納分の公共料金を支払いたい場合もあるでしょう。
しかし、債務整理中の滞納分の支払いは、一部の債権者を優遇して返済する「偏頗(へんぱ)弁済」とみなされて、債務整理手続きが無効になる恐れがあります。
債務整理では「債権者平等の原則」により、すべての債権者に平等に返済することが条件になっているからです。
債務整理中に滞納分の公共料金を支払う場合は、事前に弁護士に連絡して、支払いを許可する手続きをとってもらいましょう。
(債務整理中に新たに発生する公共料金の支払いについては、偏頗弁済にはなりません。)
公共料金を滞納すると信用情報に影響はある?
電気・水道・ガスの事業者は信用情報機関の会員ではないので、公共料金を滞納しても信用情報に傷がつく恐れはありません。
公共料金を口座振替や納付書で払っている場合は、支払いを滞納してもライフラインが止まるだけなので、クレジットカードやローンは今まで通り利用できます。
ただし、公共料金をクレジットカードで支払っている人は注意が必要です。
この場合、カードの引き落としができなくなると実質的にカード会社への支払いを滞納することになるので、信用情報に事故情報として記録されてしまいます。
1~2回程度の滞納なら、早急にカード会社へ連絡して支払いを済ませることで、信用情報が悪化するのを防げる可能性があります。
しかし、滞納が長期化するとブラックリスト入りは免れず、その後5年間はクレジットカードやローンの審査に落ちやすくなってしまうので、滞納は早めに解消しましょう。
借金を抱えているのが原因で公共料金を支払えないなら、債務整理を行うことで返済の負担が軽くなり、公共料金を支払う余裕も出てきます。
まとめ
債務整理を行った後は、クレジットカードを整理対象にしたかどうかに関わらず、5年~10年経過するまで公共料金のカード払いができなくなります。
よって、公共料金の支払い方法を銀行口座振替やコンビニ払いに変更しなければなりません。
借金の返済中は公共料金の支払いも苦しくなってしまいますが、公共料金の滞納が続くと延滞利息が発生したり、ライフラインの供給が止まったりといった深刻なデメリットが生じます。
公共料金の支払いができなくなったら債務整理で解決できる可能性があるので、弁護士・司法書士に相談してみましょう。