「クレジットカード現金化は違法なのか」という問題は未だ議論が分かれるところですが、金融庁や消費者庁などの行政機関ではどのような判断をしているのか気になりますよね。
当記事では、「クレジットカード現金化に対する金融庁の見解はどうなっているのか」、「現金化業者に対して政府はどのような措置を取っているのか」など、法的・行政的な観点から現金化について説明していきます。
この記事のポイント
- クレジットカード現金化に対する金融庁の見解はどうなっているのか
- 現金化業者に対して政府はどのような措置を取っているのか
クレジットカード現金化業者は金融庁への登録が不要
ネット上では「金融庁の許可・登録を受けていない現金化業者は違法」という指摘を見かけることがありますが、それは誤りです。
消費者金融や商工ローンといった貸金業の場合は金融庁の許可・登録が必要ですが、クレジットカード現金化は貸金業ではなく「中古品小売業」もしくは「通信販売小売業」とみなされる取引なので、無登録で営業を行っても何ら問題はありません。
買取り型の現金化業者は古物商営業許可が必要
ただし、買取り型(※1)の現金化業者に関しては、中古品(新品を含む)の売買取引によって現金化を行っているため、警察署(公安委員会)に届出を行って古物商営業許可を得る必要があります。
それ以外では、クレジットカード現金化業を営むにあたって特別な免許・許可等は不要です。
現金化業者が指定した市販の商品をカードで購入し、その商品を業者が買い取ることで現金化する方式のこと。
現金化業者の違法性に問題がないわけではない
しかし、金融庁の許可が必要ないとは言え、現金化業者の違法性に関して全く問題がないわけではありません。
クレジットカード現金化に関する明確な法律・規則が制定されていないために、その法的な解釈について行政機関・専門家の間で見解が分かれたり、悪徳業者が野放しにされたりといった問題が生じています。
現時点で、クレジットカード現金化の法的解釈は曖昧になっていますが、カード会社は現金化目的のカード利用をはっきりと禁止しているため、違法ではないからと言って迂闊に手を出すわけにはいきません。
クレジットカード現金化に対する金融庁の見解は?
2010年頃からクレジットカード現金化に関する詐欺被害が急増したことを受けて、「金融庁が現金化業者の取り締まり強化を検討中」と報道されたことがありました。
しかし、2010年の閣議後記者会見において、金融庁は報道の真偽についての質問に対し「そのような決定が行われた事実はない」と回答しています。
クレジットカード現金化は取引の形式や認識の形態が多様であることから、その違法性についてはケースバイケースで判断せざるを得ません。
このため、金融庁は「クレジットカード現金化の法律上の成否に関して、現時点では一概に判断できない」旨の答弁を行っています。
つまり、クレジットカード現金化は法律上グレーゾーンに位置する、というのが公式な見解となっています。
クレジットカード現金化が違法と断定できない理由
クレジットカード現金化が違法と断定できない理由について、もう少し詳しく説明します。
クレジットカード現金化業者は、中古品の買取りや商品購入代金のキャッシュバックといった方式で現金化を行っていますが、これらは一般的に行われている取引方式であって、違法行為にはあたりません。
消費者の合意の上で取引が成立しているのであれば、現金化業者が罪に問われる理由はありません。
もし現金化業者が逮捕されるとすれば、同じく売買取引によって換金行為を行っている金券ショップやリサイクルショップまで逮捕される事態になってしまいます。
そのようなことはまずありえないので、クレジットカード現金化業者が消費者に著しい不利益・損害を与えることがない限りは、さしあたって厳しい行政措置が取られることはないでしょう。
「クレジットカード現金化は実質的には違法」という意見も
しかし、弁護士など専門家の間では、「クレジットカード現金化は実質的に違法な貸金業」という意見もあるようです。
2011年には東京弁護士会から金融庁・消費者庁などの関係省庁に対し、「現金化業者の取り締まり強化を検討すべき」との意見書が提出されました。
これを受けて関係省庁は、実質的に違法な貸金業とみなされる悪徳業者に関しては、積極的に取り締まる方向へと動いています。
摘発対象になる悪徳業者の特徴とは?
個々のクレジットカード現金化取引に関して、適正な商取引が成立していない場合は詐欺行為もしくは違法な貸金行為とみなされます。
特に、キャッシュバック型(※2)の現金化業者の中には、架空の商品や無価値の商品を売りつけて詐欺を働く悪徳業者を見かけることがあるので、十分に警戒してください。
実際に2011年8月には、クレジットカード現金化業者を騙るヤミ金がおもちゃの宝石を高額な値段で販売し、利用者から多額の手数料を騙し取るという事件が起きています。
関連ページ:クレジットカード現金化にまつわる事件に注意!事件に巻き込まれないための対策とは?
現金化業者が提供するオリジナルの商品をカードで購入した後、購入代金の何割かを現金でキャッシュバックする現金化の方式のこと。
なお、悪質なクレジットカード現金化業者と契約してしまった人(利用者)に関しては、今のところ逮捕される心配はありません。
ただし、厳密な法的解釈をすれば、現金化の利用はカード会社に対する「詐欺罪」「横領罪」に該当する可能性があります。
しかし、過去に現金化の利用者が上記のような罪に問われた事例は見られませんので、現時点で過度に心配する必要はないでしょう。
利用者が意図的に詐欺行為を働くために現金化を行ったのかどうかは、主観的な判断によるところが大きいので、利用者の詐欺罪を立証することは困難です。
むしろ、法律に疎い消費者が現金化業者に言いくるめられて、悪意なく現金化を行うケースのほうが圧倒的に多いと思われます。
このことから、現金化の利用者を直ちに有罪と断定するのは早計であり、警察は無闇やたらに利用者を逮捕することはできないのです。
現金化によって損害を被るカード会社も、現金化一件あたりの被害額は大抵少額に収まるため、利用者をわざわざ一人ずつ訴えるようなことはしません。
クレジットカード現金化に対する金融庁の注意喚起
クレジットカード現金化は現時点で法律違反ではないとされていますが、かといって金融庁は現金化を容認しているわけではありません。
先述の記者会見において金融庁は、「消費者保護のため、クレジットカード現金化への対策は重大な関心事である」との見方をしています。
というのも、お金に困ってクレジットカード現金化を利用する消費者の中には、現金化によってさらに借金が膨らみ、困窮状態に陥ってしまう人が少なくないからです。
多重債務・無収入などの理由でキャッシングの利用が難しい人にとって、審査不要で手軽に利用できるクレジットカード現金化は魅力的に映るでしょう。
しかし、すでに多額の借金を抱えていたり、返済のあてがなかったりする状況でクレジットカード現金化を行うと、返済額が一層膨らみ苦しむことは目に見えています。
それどころか、カード会社の規約に違反した罰としてクレジットカードが使えなくなると、様々な料金の支払いや買い物が不便になってしまいます。
現金化業者は事後責任を取ってくれない
クレジットカード現金化業者は、消費者金融に相手にされない人々にも手を差し伸べる一方で、現金化を行った後の責任は一切取ってくれません。
悪質な業者の場合、キャッシングと比べて大幅に高額な手数料を徴収することで、利用者に大きな金銭的負担を強いてきます。
金融庁が喚起している3つの注意事項
ですが、クレジットカード現金化のおかげで大勢の人が助かっているのもまた事実です。
返済不能の事態に陥るのは、消費者自身の金銭管理や危機意識の甘さに起因する問題でもあるため、金融庁は消費者に対して次のような注意喚起を行っています。
消費者への金融庁の注意喚起
- お金に困ってもクレジットカード現金化は絶対に行わないこと
- 現金化業者が言う「安心」「安全」という言葉を鵜呑みにしないこと
- 多重債務など借金の問題は、まず弁護士会や消費生活センターに相談すること
このように、金融庁は現金化業者に対して取締りを強行できない代わりに、現金化の利用を未然に防ぐため多重債務者へ注意喚起しています。
借金が膨れ上がってしまっても、返済計画の見直しや債務整理など適切な対応を取れば、金銭的負担を大きく減らせる可能性があります。
クレジットカード現金化を利用してしまうと免責不許可事由(借金の免除が許可されない事由)に該当し、債務整理の道すら絶たれてしまうおそれがあるので注意してください。
現金化業者を騙るヤミ金や詐欺師に注意
加えて、クレジットカード現金化業者を騙るヤミ金や詐欺師に騙され、お金を巻き上げられる危険性も無視できません。
消費者生活センターの報告によると、2009年~2011年にかけてクレジットカード現金化に関する相談件数はピークに達しましたが、以降は警察の取り締まりが強化されたおかげで、2020年現在の相談件数は大幅に減少しています。
しかし、現在でも警察の目が届かないところで悪徳業者の被害に遭うケースはごく少数ながら存在しています。
クレジットカード現金化業者を名乗ってはいても、手数料や取扱う商品におかしな点があればヤミ金・詐欺師の可能性が高いので、油断しないようにしましょう。
例えば、100均で売っているようなグッズを数万円単位の価格で販売しているようなケースは明白な詐欺行為であり、非常に危険です。
個人でクレジットカード現金化を行うリスクは上昇している
金融庁や関係団体によってクレジットカード現金化への注意喚起・対策が強化されたために、現金化を利用する消費者にも慎重な対応が求められるようになりました。
独立行政法人国民生活センターは、現金化撲滅対策の一環として日本クレジット協会(クレジット会社の業界団体)に対し、次の要望を出しています。
関連ページ:クレジットカード現金化業者の問題を相談するなら消費者庁所管の国民生活センターへ
独立行政法人国民生活センターの日本クレジット協会への要望
- クレジットカードの利用規約において、現金化(換金)目的のカード利用を禁止する旨を強調して記載すること
- クレジットカードの利用規約やカード会社のウェブサイトにおいて、現金化の危険性を消費者に分かりやすく説明すること
- 加盟店の管理を徹底し、現金化業者とは加盟店契約を結ばないこと
以上の要望を受けたカード会社は、現金化業者とその利用者に対する監視体制を一層強化しているので、個人でクレジットカード現金化を行うリスクも上昇しています。
少額の現金化を1回や2回行うだけなら見逃されるかもしれませんが、高額の現金化を度々繰り返せば確実にカード会社に怪しまれるでしょう。
クレジットカード現金化を何回も行うつもりであれば、自分で危ない橋を渡るよりも、安全対策が徹底しているクレジットカード現金化業者を利用するほうが間違いなく安心です。
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