クレジットカード現金化を利用する人が拡大する一方で、「現金化を装った詐欺」「違法業者の摘発」といった事件も目立つようになりました。
このような事件の影響で、クレジットカード現金化に悪いイメージを持っている人もいるでしょう。
しかし、クレジットカード現金化自体に違法性があるのではなく、ごく一部の悪徳業者が違法行為を行っているから事件になるのです。
悪徳業者の摘発事件からその特徴・手口を知って自衛し、優良店だけを選んで利用すれば、危険な事件に巻き込まれる恐れはありません。
当記事では、クレジットカード現金化にまつわる事件に関して、以下のような疑問点にお答えしていきます。
この記事で取り上げるポイント
- クレジットカード現金化業者による違法行為や詐欺事件にはどんなものがあるか?
- クレジットカード現金化の詐欺事件に巻き込まれないためにはどうすればいいか?
- クレジットカード現金化を利用した人が逮捕された事件はあるか?
クレジットカード現金化絡みの事件にはどんな種類がある?
クレジットカード現金化業者を装った悪徳業者が起こす事件には、次のような種類のものがあります。
出資法違反
クレジットカード現金化業者の摘発が目立つようになったのは、改正貸金業法が施行された2010年頃からです。
改正貸金業法によってグレーゾーン金利がなくなったことで、それまで暴利を貪っていた悪徳金融業者が現金化業界に流入し始めました。
(※グレーゾーン金利とは「利息制限法」の上限金利(15%~20%)と「出資法」の上限金利(29.2%)の間に存在していた金利のことです。)
その結果、2010年~2012年頃にかけてクレジットカード現金化を装った違法な高金利貸付が横行し、ニュースでも取り沙汰されるようになったのです。
クレジットカード現金化と融資は全く異なる取引ですので、本来はクレジット現金化とヤミ金やサラ金、消費者金融とは関係がありません。
しかし、ヤミ金の中には現金化業者を装いながら、実質的に違法な貸付を行っている悪徳業者が存在します。
違法なヤミ金の特徴としては、以下のような点が挙げられます。
- 法定金利(15%~20%)を大幅に超える手数料を取っている
- 架空の商品、もしくは全く市場価値がない商品(紙切れや石ころなど)を媒介にし、まっとうな売買取引を装っている
- 実質的には貸金業者であるにも関わらず、登録業者としての届出を行っていない(本来クレジットカード現金化は特別な届出なしで営業が可能です)
このようなヤミ金は政府に無許可で貸金業を営んでいるため、貸金業法違反に該当します。
(本物の現金化業者の場合は特別な法規制が適用されないので、営業許可は不要です。)
手数料が法定金利(15%~20%)を超えている業者や、商品の受け渡しを行わず取引の中身が不明瞭な業者は、ヤミ金の可能性が高いので注意してください。
ヤミ金とキャッシュバック型現金化業者の取引は表面上よく似ているので、クレジットカード現金化だと信じてヤミ金と取引をしてしまう人が後を絶ちません。
(※キャッシュバック型とは、現金化業者が利用者に自社商品をカードで購入させ、購入費をキャッシュバックするという形式で現金化を行う方式です。)
特に現金化に慣れていない人の場合は、ヤミ金の巧妙な手口を見破ることは難しいでしょう。
古物営業法違反
買取り方式(カードのショッピング枠で購入した商品を買い取って現金化する方式)の業者の場合、古物商許可を申請して「古物営業許可番号」を取得しなければ営業が許可されません。
許可を得ずに営業している買取り方式の業者は、「古物営業法」違反に該当するので逮捕されてしまいます。
個人情報の漏洩や悪用
現金化の申込み時に利用者が提供した個人情報(住所・電話番号やクレジットカード情報など)を悪用する詐欺師も存在しています。
業者に悪意がなかったとしても、セキュリティが甘いせいで個人情報が外部に漏洩してしまう可能性もあります。
「楽天」や「ベネッセ」といった有名企業ですら個人情報漏洩事件を起こしているのですから、クレジットカード現金化業者の場合もそのリスクは無視できません。
ただ、現金化の利用者は信用情報などのステイタスが弱いことが多いので、顧客リストとしての価値は低く、外部のハッカーに個人情報を狙われる危険性は低いでしょう。
その他の詐欺事件
わざわざニュースで報道されるようなことはありませんが、目立たないところでは次のような詐欺事件も多発しています。
過去に起こった詐欺事件の一例
- 入金直前になって、勝手に換金率を下げられた
- クレジットカード決済を行った途端に連絡が途絶え、結局入金されなかった
- クレジットカードを不正利用され、多額の請求が来た
上記のように、明確な法律違反であることを立証するのが難しいケースでは、警察の介入ができないため多くの人が泣き寝入りしています。
身近なところに潜む詐欺事件に遭わないようにするには、悪徳業者の手口を知って自衛することが大切です。
実際に起きた悪徳業者の摘発事件と判例
2011年8月には全国で初めて、クレジットカード現金化業者を装ったヤミ金が摘発されるという事件が起きました。
摘発されたのは、現金化業者「キャッシュバックス(株式会社インフィニティ)」の元代表・橋本幸治容疑者です。
同容疑者は、キャッシュバック方式の現金化と似た手口で違法な貸付を行っていました。
その手口は、1個100円程度のおもちゃのネックレスを高額な値段(数千円~百万円以上)で販売し、手数料を差し引いた購入代金をキャッシュバックで利用者に支払うというものでした。
同容疑者はこの手口で、700人以上から約8,000万円の手数料を騙し取っていたとのことです。
裁判では、上記のような商品売買は形式的な取引に過ぎず、実質的な高金利貸付であると判断され、同容疑者に「出資法違反」という有罪判決が下されました。
判例を参考に現金化業者とヤミ金の違いを知ろう
以上の判例を参考にすると、現金化業者とヤミ金を見分けるには、「実態のある商取引を行っているかどうか」がポイントということになります。
ヤミ金「キャッシュバックス」の判例では、商品の実際の価値に見合わない高額な取引内容が問題とされました。
つまり、現金化業者が販売している商品の価値と販売価格が大きく乖離している場合は警戒すべきということです。
「商品の送付を行わない」「架空の商品を販売する」といった、売買取引の実態を持たない業者にも注意してください。
キャッシュバック型の現金化業者を利用する際は、「少額でも市場価値が認められる商品を取り扱っている」「きちんと商品を送付してくれる」業者を選ぶようにしましょう。
クレジットカード現金化の悪徳業者は年々減少
クレジットカード現金化を装う悪徳業者の数や摘発数・相談件数は一体どれくらいなのか、気になるところではないでしょうか?
国民生活センターのPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)が提供するデータによると、クレジットカード現金化に関する相談件数は年々減少しているとのことです。
全国初のクレジットカード現金化業者摘発事件が発生した2011年には、国民生活センターへの相談件数が600件を超えていました。
しかし、それ以降は悪徳業者への取り締まりが強化されたおかげなのか、2012年~2016年にかけては相談件数が約20件にまで減少しています。
悪徳業者の被害者が大幅に減少した現在では、よく注意していれば詐欺事件に遭う確率はかなり低いと考えられます。
関連ページ:クレジットカード現金化業者の問題を相談するなら消費者庁所管の国民生活センターへ
クレジットカード現金化が裁判で違法になる可能性はある?
今までの裁判で有罪判決が下されているのは、あくまでヤミ金や詐欺師といった偽物の現金化業者です。
では、正真正銘のクレジットカード現金化業者が違法行為に該当する可能性はあるのでしょうか?
刑法の専門家達の見解によると、クレジットカード現金化自体は明確に違法とはみなされませんが、「電子計算機使用詐欺罪」に該当する可能性が高いと指摘しています。
なぜなら、商品購入を装ってクレジットカード現金化を行うのは、カード会社の電子決済システムに虚偽の決済情報を与えて、現金を騙し取る行為に等しいからです。
結果として現金化業者とその利用者が財産上の利益を得ていれば、詐欺とみなされてもおかしくはないでしょう。
現時点では、クレジットカード現金化について詐欺罪が成立するかどうかは、まだ検討が十分に行われていません。
実際に「電子計算機使用詐欺罪」で現金化業者が摘発された事例はありますが、このケースでは取引を行ったのがヤミ金だったということが判明したためで、現金化自体が違法と断定されたわけではありません。
その証拠に、現金化業者に対する大々的な取り締まりは未だに行われていません。(「違法な貸金業」とみなされた一部の悪徳業者を除く)
平成22年には、「政府が現金化を貸金業とみなし、現金化業者を無登録業者として取り締まる方向で検討中」という報道がありました。
しかし実際に金融庁や経済産業省でそのような決定が行われた事実はなく、現在でも法律面では現金化の扱いは有耶無耶になったままの状況です。
関連ページ:クレジットカードを使って現金化する事に対して金融庁はどう思っている?見解や対応は?
クレジットカード現金化の利用者が逮捕された事件はある?
違法行為に手を染めた悪徳業者だけでなく、クレジットカード現金化の利用者が逮捕されることはあるのでしょうか?
現金化自体は明白な違法行為とされてはいませんが、利用者側も慎重にならなければ、カード会社との間で訴訟事件に発展する可能性はあります。
見方によれば、クレジットカード現金化はカード会社に対する「詐欺・横領」に該当するという指摘もあり、厳密にはグレーゾーンの行為です。
クレジットカードで購入した商品の所有権は、返済が完了するまでカード会社に帰属します。
したがって、返済前に何の断りもなく商品の転売・譲渡などを行えば、カード会社に訴えられてもおかしくありません。
実際に現金化利用者が訴えられたケースはない
しかし、カード会社が現金化利用者を訴えたという話は、これまで聞いたことがないのではありませんか?
それは、クレジットカード現金化を行う人があまりに多すぎるため、カード会社としては打つ手がないに等しいからです。
カード会社の被害額は1件あたりが少額(数万円~数十万円)なので、高額な費用と労力をかけて訴訟を起こしても割に合いません。
今後は法改正などによって、現金化に対する何らかの法的措置が講じられる可能性はありますが、現時点では利用者が罪に問われる心配はないでしょう。
違法なヤミ金との取引には要注意!
先述したように現金化を利用した人が逮捕される心配はありませんが、例外的に、クレジットカード現金化業者を騙るヤミ金との取引には注意が必要です。
ヤミ金は現金化業者を装いながら、実質的には法外な利息で違法な貸付を行っています。
場合によっては、利用者側もヤミ金の違法行為に加担・共謀したとして逮捕される危険性があるのです。
実際に、2017年には出資法違反のヤミ金を利用した一般人が、ヤミ金と共謀し「電子計算機使用詐欺」を働いたとして逮捕された事件が起きています。
現金化を装ってはいても、「商品の受け渡しを行わない」「架空の商品を購入する」といった取引は違法な貸付とみなされるので注意してください。
カード会社からのペナルティ・訴訟を受けるリスクも!
万が一カード会社に現金化を行ったことがバレると、相応のペナルティを受けるリスクがあることも忘れてはいけません。
特に、以下に該当する人はカード会社からのチェックが厳しくなり、現金化がバレやすくなってしまうので気をつけましょう。
カード会社からのチェックが厳しくなるケース
- クレジットカードの返済が遅れている
- カードの利用明細で、換金性の高い商品(金券やブランド品など)の購入履歴が目立っている
- キャッシング枠の限度額一杯まで借入れをしている
カード会社に現金化がバレると、クレジットカードの利用を強制的に止められたり、残債の一括請求を迫られたりします。
もしも残債が支払えなくなってしまったら、カード会社に訴訟を起こされる恐れもあります。
借金滞納は、通常なら債務整理事件(任意整理や自己破産など)として処理されます。
しかし、クレジットカードを現金化目的で使用した場合は「免責不許可事由」に該当し、借金の減額・免除が認められなくなってしまいます。
その結果、多額の借金を抱えて困窮することになってしまうので、現金化の利用後は決してカード会社への返済を怠ってはいけません。
クレジットカード現金化の詐欺事件に遭わないための対策
会社情報に不審な点がないかチェックする
初めて利用する現金化業者については、必ず会社情報からその実態を念入りに調べるようにしましょう。
会社名(業者名)をネット検索して、行政処分の記録や被害報告がないかどうかを確認しておくと安心です。
悪徳業者が実在の優良業者を装っている可能性もあるので、念のために会社HPのURLに不審な点がないかも調べてください。
無料のサイトチェッカー「SecURL(セキュアール)」などを利用すると、URLの安全性を簡単にチェックできます。
クレジットカードの暗証番号は絶対に教えない
現金化業者からクレジットカードの暗証番号やセキュリティコードを直接聞かれるようなことがあっても、絶対に教えないようにしてください。
現金化業者の自社サイトまたは外部サイトでカード決済を行うときは、SSL通信(暗号化通信)を行っているかどうかを必ずチェックしましょう。
ブラウザに表示されるサイトURLの先頭に鍵アイコンがついていれば、SSL通信が行われている証拠です。
ただし、マルウェア(悪意のあるソフトウェア)の感染や公共Wi-Fiでの通信傍受など、カード情報が不正に盗まれるリスクは常に存在しています。
万が一の不正利用に早めに気がつくためには、カードの利用明細をまめに確認しておくことも重要です。
手数料が高すぎると思ったら契約を断る
現金化のHPに掲載されている手数料を鵜呑みにせず、必ず契約前に実際の手数料を問い合わせましょう。
手数料が15%~20%を超えている場合は、法外な金利で貸付を行っているヤミ金の可能性があるので、契約を断るのが賢明です。
契約書に必ず目を通し、不利な契約条件がないか確認する
現金化業者と交わす契約書には必ず隅々まで目を通して、おかしな内容や不利な条件等がないかを確認しましょう。
契約内容を十分に把握しないまま契約してしまうと、たとえ不利な条件であっても利用者は同意の上で契約したとみなされ、悪徳業者を訴えることができません。
契約書すら交わさない業者や、白紙の契約書に捺印をさせる業者は怪しいので避けてください。
クレジットカード現金化の詐欺事件に巻き込まれてしまったら?
「現金化業者からの入金がない」「クレジットカードを不正利用された」などの被害に遭ってしまったら、被害を最小限に抑えるために以下の手続きを行いましょう。
クレジットカードの利用停止手続きをする
悪徳業者にクレジットカード情報が渡ってしまうと、いつ不正利用されるか分かりません。
取引相手が悪徳業者だと気がついた時点で、速やかにカード会社へ連絡して、クレジットカードの利用停止手続きを行いましょう。
カードを利用再開するときは、必ずカード番号や暗証番号の変更を行ってください。
万が一クレジットカードを不正利用されてしまったら、60日以内に届ければ「盗難・紛失保険」による補償が受けられます。
ただし、現金化を利用したことがカード会社にバレてしまったり、カードの裏面にサインをしていなかったりする場合は、補償の対象外になるので注意しましょう。
警察や公的機関の窓口に相談する
クレジットカード現金化に関する詐欺などのトラブルは、全国の国民生活センターや法律事務所に相談することができます。
法律事務所では相談料が発生することがあるので、まずは相談料無料の「消費者ホットライン(188)」に連絡することをおすすめします。
悪徳業者に対して返金請求や訴訟などの法的手段を取る際は、弁護士や司法書士にサポートを依頼すると心強い味方になってくれます。
悪徳業者から執拗な取立てなどの迷惑行為を受けていたり、暴力事件などの緊急を要する事態であったりするなら、警察にも相談しましょう。